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千葉地方裁判所 昭和57年(行ウ)15号 判決 1987年5月06日

千葉県八日市場イの一三八番地の一〇

原告

株式会社千葉農林

右代表者代表取締役

岡野全孝

右訴訟代理人弁護士

浅見敏夫

横井治夫

千葉県銚子市栄町二-一一一

被告

銚子税務署長

加藤仁代

右指定代理人

窪田守雄

小林康行

竹澤雅二郎

戸田俊幸

剣持哲司

吉田良一

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が原告に対して昭和五五年二月二六日付でなした原告の昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、原告のした確定申告、これに対して被告のした更正(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)並びにこれに対する異議申立、異議決定、審査請求及び審査裁決等の経緯は、別表(一)記載のとおりである。

2  しかし、本件更正は、原告の所得金額を過大に認定した違法なものであり、また、本件賦課決定も所得を過大に認定した本件更正を前提とする点において違法である。

よつて、原告は、本件更正及び本件賦課決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認めるが、同2の主張は争う。

三  被告の主張

1  原告の本件事業年度の所得金額は、別表(二)記載のとおり四億八九五七万七五八二円であり、これと同額を原告の所得金額としてなした本件更正は適法である。

2  別表(二)の加算金額たる土地譲渡収入計上もれについて

(一) 原告は、その所有する千葉市塩田町三六六番一ほか五五筆、合計地積四万八四五七・七二平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)を別表(三)のとおり合計一四億三九一九万四二八四円で売却譲渡(以下「本件譲渡」という。)したが、右合計譲渡代金額のうち、二億八七八三万八八五七円のみを原告の収入金額に計上し、残代金額一一億五一三五万五四二七円を収入金額に計上していなかつたので、右計上もれの金額を原告の本件事業年度の収入として加算した。

(二) なお、右(一)の合計譲渡代金額一四億三九一九万四二八四円については、原告、株式会社大洋興産(以下「大洋興産」という。)及び那須ハイランドワイン株式会社(以下「那須ハイランドワイン」という。)の三者が、別表(四)のとおり、それぞれ収入を得たものとして経理処理されている。

(三) しかし、次に述べるとおり、右合計譲渡代金額は、全額原告の収入に計上すべきである。

(1)ア 原告は、代理人宇野亨を介して、昭和四四年六月四日、東邦工業株式会社(以下「東邦工業」という。)との間で、本件土地の大部分を含む千葉市塩田町及び同市浜野町所在の土地一〇万三五一二平方メートル(実測地積である。以下、右土地を「原取得地」という。)を代金八億三五〇〇万円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結した。

イ 宇野亨は、<1>原告の設立に際して出資を行い、その株式の多数を所有し、<2>原告の代表取締役の記名印及び代表者印を保管し、<3>原告の会計処理及び税務申告に必要な事項を指示し承認を与えていたものであり、<4>原告代表取締役からも原告の実質的オーナーとして認められていた、ものである。

(2) 右代金の支払については、原告は、昭和四四年六月四日、平和相互銀行千葉支店(以下「平和相互」という。)から原告名義で五億五〇〇〇万円を借り入れ、右借入資金のうちから四億一八五二万八〇〇〇円を東邦工業に対して支払い、残代金四億一六四七万二〇〇〇円は、大洋興産が、同年同月七日、平和相互から大洋興産名義で五億四〇〇〇万円を借り入れて、右借入資金のうちから東邦工業に対して支払つた。

(3) 原告及び大洋興産は、右購入代金の支払額に対応して、原取得地をほぼ二等分し、その一方である本件土地の大部分に該当する部分(以下「第一次原告名義地」という。)を原告が、他方を大洋興産がそれぞれ取得することとして、右各土地につきそれぞれ所有権移転登記を経由した。

(4) 原告は、第一次原告名義地を取得した日を含む昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税確定申告書に添付された決算書に、右土地を原告の所有土地としてその取得価額四億二五〇二万四九〇八円(購入代金四億一八五二万八〇〇〇円に登録税の額六四九万六九〇八円を加算した金額)をたな卸資産として計上している。

(5)ア 原告は、第一次原告名義地を昭和四五年一月二〇日付けで阿部土地建物株式会社(以下「阿部土地建物」という。)に買戻特約付きで代金五億五〇〇〇万円で売買する旨の契約書を作成し、右土地につき阿部土地建物名義に所有権移転登記を経由した。しかし、右の売買契約書は全く形式上の書面にすぎず、売買代金の授受は行われていない。

イ 原告は、更に阿部土地建物名義で、昭和四七年三月二二日、右土地に隣接していた千葉市塩田町三六七番四所在の国有地七六一・六一平方メートル(以下「旧国有地」という。)を買い受けた。

ウ 第一次原告名義地及び旧国有地に係る関連費用のうち、その主なものである阿部土地建物名義で銀行融資を受けたことに伴う融資銀行への支払利息及び固定資産税等は、いずれも原告の各事業年度における帳簿上、各支払利息及び公租公課の勘定に原告の費用として計上されている。

エ そして、右費用の支払は、大洋興産あるいは那須ハイランドワインからの債務である仮受金を資金として行われ、右仮受金は、各年度末において、同社らに対する債権として存在する仮払金との相殺によつて清算されている。原告の総勘定元帳中の仮払金勘定等を基に、各事業年度における原告の大洋興産に対する仮払金の期中増加額、その相手勘定科目別内訳及び右仮払金が各期中において大洋興産からの仮払金と相殺されている状況等を一覧表にして示すと、別表(五)記載のとおりとなり、この会計処理を詳述すると、次のとおりである。

(ア) 原告の大洋興産に対する仮払金は、昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度には、大洋興産に現金・預金などを以つて交付した仮払金の期中増加額が一億一八九一万二三七九円(別表(五)<2>)あり、同期末における前期繰越額との合計は三億九三五三万六五三一円となり、そのうち一億八九三九万八五四五円が大洋興産からの仮受金と相殺され(別表(五)<3>)、残額二億〇四一三万七九八六円が次の事業年度に繰り越された(別表(五)<4>)。

(イ) 昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度においては、大洋興産に対する仮払金の期中増加はなかつたものの、同期末には、大洋興産からの仮受金七三七三万四二三四円と相殺され(別表(五)<3>)、残額一億三〇四〇万三七五二円が次の事業年度に繰り越された(別表(五)<4>)。

(ウ) 昭和四九年一月一日から一二月三一日までの事業年度には、大洋興産に現金・預金などを以つて交付した仮払金の期中増加額が六三七〇万五三一五円あり、同期末における前期繰越額との合計は一億九四一〇万九〇六七円となり、そのうち一億〇〇五〇万一五九三円が仮受金と相殺され(別表(五)<3>)、残額九三六〇万七四七四円が次の事業年度に繰り越された(別表(五)<4>)。

(エ) 昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度には、大洋興産に対する仮払金の期中増加額が五七六七万二七四一円あり、同期末における前期繰越額との合計は一億五一二八万〇二一五円となり、その金額が仮払金と相殺され(別表(五)<3>)、仮払金残額は零円となつた(別表(五)<4>)。

(オ) 本件事業年度には、大洋興産に対する仮払金の期中増加額が六億二〇一一万〇七一八円あり、そのうち同期末に五億六五四一万三七五八円が仮受金と相殺され(別表(五)<3>)、残額五四六九万六九六〇円が次の事業年度に繰り越された(別表(五)<4>)。

(カ) 次に、別表(五)の仮払金の期中増加額の内訳に対応して原告の総勘定元帳中の相手勘定科目・伝票等との突合せにより、各期中の個々の仮払金の発生に係る仕訳を解明し、相手勘定科目等を含めた個々の仮払金の発生状況を示すと、別表(五)の付表(1)ないし(6)のとおりとなる。

(キ) 以上のとおり、原告の大洋興産に対する個々の仮払金の発生は、その多くが現金・預金等を以つて相手方に交付され、この限りで現実の金の流れを伴つて発生したものであり、現金・預金等の交付以外のものについても、その相手勘定科目に照らして、原告との取引が存在し、これを原告の大洋興産に対する仮払金に振り替えたものと認められるものである。

オ 原告は、右ウおよびエのとおりの会計処理によつて確定された決算に基づいて、昭和四七年度ないし同五一年度における各確定申告を行つている。

(6) 原告は、本件土地について、別表ⅲ記載のとおりの譲渡(本件譲渡)を行つたが、右譲渡に際して、本件土地の登記簿上の所有名義はすべて原告であつたし、本件譲渡の各契約締結及び引渡しはすべて原告名義でなされた。なお、原告は、右の契約締結等については、北葉地所株式会社の近藤社長に委任して事務処理などを代理・代行させた。

(7) 原告は、本件譲渡による代金のうち、別表(三)中の財団法人千葉県都市公社へ譲渡した分について、昭和五一年八月五日に四億円、同月二五日に二億七九五五万三五二三円、同年九月八日に三六八二万五六二四円の支払を受けているが、右代金のいずれについても原告名義の請求書及び領収証が発行されている。

また、同表中の財団法人千葉市開発財団へ譲渡した分についても、同年八月五日に四億円、同月二五日に二億九〇四四万二一三七円、同年九月八日に三二三七万三〇〇〇円が支払われているが、右支払はいずれも千葉相互本店の原告の普通預金口座への振込みの方法によりなされている。

(8) 原告は、前期(5)のとおり、第一次原告名義地を一時阿部土地建物に譲渡したとして同社にその所有名義を提供されていたが、そのうちの本件土地部分(一部、阿部土地建物名義で取得した旧国有地も含む。)を、再び自己が取得したとして、本件事業年度の原告の総勘定元帳中の仕入勘定の昭和五一年二月二八日及び同年三月九日欄に、本件譲渡に係る譲渡原価五億五七四一万六三二五円の大部分に当たる五億三四七五万六三二五円を計上している。

なお、本件譲渡のうち、昭和五一年八月五日の譲渡後であり、同年九月三日の譲渡の直前である同年八月三一日に、右計上された譲渡原価のうち、三億七三七六万九四二七円が大洋興産に、五三三九万五六三二円が那須ハイランドワインに、それぞれ振り替えられている。

(9) 原告は、本件譲渡について、原告の取締役会の承認を得たうえ、その取締役会議事録をそれぞれ財団法人千葉県都市公社及び財団法人千葉市開発財団に提出している。

(10) 右(2)ないし(9)の原告の各行為が、仮に宇野亨の関与の下に行われたとしても、宇野亨は、前記(1)イのとおり原告の実質的オーナーであり、右宇野の関与は原告のためにしたものである。

(11) 原告は、大洋興産とは独立した法人格を有する事業主体である。

ア 原告は、本件事業年度以前から、毎事業年度に被告に対して自ら自己の所得に関して確定申告を行つている。

イ 原告は、昭和三五、六年ころ、千葉県八日市場市東小笹汐汲の部落共有地を買収し、また、本件事業年度の翌期である昭和五二事業年度中には、東京都台東区上野四丁目七八番ほか所在の通称京成上野ビルの土地建物を京成電鉄株式会社から買い受けたうえ、これを上野ビスタビルディング株式会社に売り渡すという不動産取引を行うなどの事業活動を行つている。

ウ 原告の昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度ないし本件事業年度の各事業年度に係る決算報告書の損益計算書に記載の売上高及び売上原価等の諸費用について、これを右諸費用の支出目的に着眼して「営業費関係」、「対外活動費関係」、「人件費関係」及び「維持管理費関係」に区分して分類すると、別表(六)に示すとおりとなり、右に計上された各数額から、原告が本件事業年度当時、独立して事業活動を営んでいたことが明らかである。

3  別表(二)加算金額たる寄付金の損金不算入額について

(一) 原告、大洋興産及び那須ハイランドワインは、前期別表(四)のとおり本件土地の譲渡代金額、譲渡原価及び譲渡益を右三社で二対七対一の割合に各配分したうえ、右配分された金額を確定決算に計上し、右決算に基づいて、それぞれ法人税の確定申告をしている。

(二) しかしながら、右のような本件土地の譲渡益の配分は、以下に述べるとおり、原告ら三社が、いずれも多額の繰越欠損金を抱えていることを奇貨として、本来原告にのみ帰属すべき本件譲渡による譲渡益を、そのまま原告一社の収益として、原告一社の繰越欠損金額を損金算入したのでは所得が発生してしまうので、三社の間で二対七対一の割合で配分し、これらと三社の繰越欠損金額の一部をそれぞれ当期控除額として損金の額に算入して、結局本件譲渡による譲渡益全額について不当に法人税の課税を免れようとする意図の下に行われたものである。

(1) 原告ら三社の本件事業年度(那須ハイランドワインについては、昭和五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度(以下、これを「昭和五二年三月期」という。」という。)の法人税の確定申告状況等は別表(7)のとおりであり、その内容は次のとおりである。

ア 原告の申告所得金額(別表(7)欄)

原告は、本件事業年度において、本件土地の譲渡代金一四億三九一九万四二八四円の二割相当額である二億八七八三万八八五七円(別表(7)<1>)を収益の額として売上金額に計上し、本件土地の譲渡原価五億五七四一万六三二五円の二割相当額である一億一二一二万三二六六円(同表<2>)を売上原価の額に計上した。その結果、本件譲渡に係る譲渡益の額は一億七五七一万五五九一円となり、右金額から、一般管理費の額三二六五万四〇四八円及び営業外費用の額六四二八万〇三六一円の合計額九六九三万四四〇九を控除し、更に営業外収益の額一九万六九四八円を加算して、当期利益金の額を七八九七万八一三〇円(同表・(7))と算定した。

そして、原告は、右当期利益金額に、「損金の額に算入した道府県民税及び市町村民税」及び「損金の額に算入した附帯税、加算金及び延滞金」の「加算」並びに「法人税額から控除される所得税額の加算」をそれぞれ行つて、繰越欠損金控除前の所得金額を七九〇二万二五八五円(同表<ア>・<11>)と算定した。

ところで、原告の本件事業年度以前の各事業年度において発生した欠損金額のうち、本件事業年度に繰り越した繰越欠損金の額は、二億八五六九万二九九四円であつた(別表(八)の合計欄)。

そこで、原告は右繰越欠損金額のうち七九〇二万二五八五円を本件事業年度の所得金額から控除して、申告所得金額を零円と算定した(別表(七)・<ア>・<13>)。

イ 大洋興産の申告所得金額

大洋興産は、本件土地の譲渡代金一四億三九一九万四二八四円の七割相当額である一〇億〇七四三万五九九九円を、本件事業年度に係る収益の額として売上げ金額に計上し、また、本件土地の譲渡原価五億五七四一万六三二五円の七割相当額である三億八九六三万一四二七円を売上げ原価の額に計上した。大洋興産には、本件事業年度において、本件土地以外の土地の譲渡による譲渡収益の額七〇五六万二〇〇〇円があつたところ、これに係る譲渡益の額六五四二万五六二〇円をも含めて、本件事業年度の売上総利益の額を六億八三二三万〇一九二円(別表(七)・<3>)と算定した。右売上総利益金額から、一般管理費販売費の額五四四八万八五四二円及び営業外費用の額四億五七五一万二八三〇円の合計額五億一二〇〇万一三七二円を控除し、更に営業外収益の額一六五〇万七三八六円を加算して当期利益金の額を一億八七七三万六二〇六円(同表・<7>)と算定した。

そして、大洋興産は、右当期利益金額に、「損金の額に算入した道府県民税及び市町村民税」及び「交際費等の損金不算入」の「加算」、「所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等」の「減算」並びに「法人税額から控除される所得税額の加算」をそれぞれ行つて繰越欠損金控除前の所得金額を一億八五〇〇万一五八四円と算定した。

ところで、大洋興産の本件事業年度以前の各事業年度において発生した欠損金額のうち、本件事業年度に繰越した繰越欠損金の額は、七億九〇八六万一四二七円であつた(別表(八)の合計欄)。

そこで、大洋興産は、右繰越欠損金額のうち一億八五〇〇万一五八四円を本事業年度の所得金額から控除して、申告所得金額を零円と算定した。

ウ 那須ハイランドワインの申告所得金額

那須ハイランドワインは、本件土地の譲渡代金一四億三九一九万四二八四円の一割相当額である一億四三九一万九四二八円(別表(七)・<1>)を昭和五二年三月期に係る収益の額として売上金額に計上し、また、本件土地の譲渡原価五億五七四一万六三二五円の一割相当額である五五六六万一六三二円(同表・<2>)を売上原価の額に計上した。その結果、本件譲渡に係る譲渡益の額は八八二五万七七九六円(同表・<3>)となり、右金額から、一般管理費販売費の額二一二六万二一八六円及び営業外費用の額二三三二万五七四一円の合計額四四五八万七九二七円を控除し、更に営業外収益の額二四八万五四五五円を加算して、当期利益金の額を四六一五万五三二四円(同表・<7>)と算定した。

そして、那須ハイラウンドワインは、右当期利益金額に「損金の額に算入した道府県民税及び市町村民税」、「損金の額に算入した附帯税、加算金及び延滞金」及び「役員償与」の各「加算」並びに「所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等」の「減算」をそれぞれ行つて、繰越欠損金控除前の所得金額を四五八六万七五七七円(同表・<キ>・<11>)と算定した。

ところで、那須ハイランドワインの昭和五二年三月期以前の各事業年度において発生した欠損金額のうち、昭和五二年三月期に繰越した繰越欠損金の額は、三億二四七一万九四七八円であつた(別表(八)<キ>の合計欄)。

そこで、那須ハイランドワインは、右繰越欠損金額のうち四五八六万七五七七円を昭和五二年三月期分の所得金額から控除して、申告所得金額を零円と算定した。

(2) しかし、前期2のとおり、本件土地の譲渡代金額一四億三九一九万四二八四円の金額を原告に帰属すべき収益の額として右三者の右各事業年度の所得金額を計算すると、原告の本件事業年度の所得金額は、同年度の期首繰越欠損金額二億八五六九万二九九四円の全額を当期控除額として損金の額に算入した場合においても、別表(七)に示すとおり四億八九五七万七五八二円となる(同表<イ>・<13>)。この場合、大洋興産の本件事業年度の所得金額は、別表(七)に示すとおり四億三二八〇万二九八八円の欠損金となり(同表<オ>・<11>)、那須ハイランドワインの昭和五二年三月期の所得金額は、別表(七)に示すとおり四二三九万〇二一九円の欠損金となつて(同表<ク>・<11>)、右二社の各事業年度における期首の繰越欠損金の額は、大洋興産における昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の控除未済欠損金を除き、そのまま翌事業年度に繰り越されることとなる。

(3) ところで、原告、大洋興産及び那須ハイランドワインの三社は、いずれもその代表取締役ないし実質的オーナーである宇野亨の任意の意思によつて支配管理されている会社であり、各会社の行つた経済取引につき、これをいずれの会社の取引として会計処理するか、また、各会社の所得の配分等税務申告の内容をどのようにするかなどは、同人の自由意思で、いかようにも操作することが可能であつた。

(4) 本件土地の譲渡益を原告、大洋興産及び那須ハイランドワインに二対七対一の割合で配分すべき基準ないし具体的根拠は何ら存しない。

(5) 以上の(1)ないし(4)の各事実を総合すれば、本件譲渡による収益の額を二対七対一の割合で原告、大洋興産及び那須ハイランドワインにそれぞれ配分して右三社が各納税申告を行つたのは、原告のオーナーである宇野亨の判断に基づき、原告が本来納税すべき法人税の額を不当に免れる意図によるものであることは明らかである。

(三) してみると、原告が大洋興産及び那須ハイランドワインに配分した別表(4)記載の各譲渡益は、原告が何らの反対給付を受けることなく、右二社に対して右譲渡益に見合う経済的利益を供与したものというべきであるから、大洋興産に配分された右譲渡益六億一七八〇万四五七二円及び那須ハイランドワインに配分された同八八二五万七七九六円の合計七億〇六〇六万二三六八円は、法人税法三七条五項に規定する寄付金に該当する。

(四) 右寄付金の金額の損金算入限度額を計算すると、次の算式のとおり六億九六二四万七九九一円が損金不算入額となるから、右金額を本件事業年度の所得金額に加算した。

(1) 繰越欠損金控除前所得金額

七八九八万七八三〇円

(2) 寄付金の額 七億〇六〇六万二三六八円

(3) 寄付金支出前所得金額((1)+(2))

七億八五〇五万〇一九八円

(4) (3)×一〇〇分の二・五=一九六二万六二五四円

(5) 本件事業年度末の資本等の金額

一〇〇万円×一〇〇〇分の二・五=二五〇〇円

(6) 寄付金の損金算入限度額

((4)+(5))×二分の一 九八一万四三七七円

(7) 寄付金の損金不算入額((2)-(6))

六億九六二四万七九九一円

4  別表(二)の減算金額たる土地譲渡原価認容について

本件譲渡による収入は、前記2のとおり、全額原告の譲渡収入となるべきものであるから、別表(四)記載の大洋興産の譲渡原価三億八九六三万一四二七円及び那須ハイランドワインの譲渡原価五五六六万一六三二円の合計金額四億四五二九万三〇五九円は、原告の譲渡原価となるべきものであるので、本件事業年度の所得金額から減算した。

5  別表(二)の減算金額たる寄付金認容について

前記3のとおり、大洋興産に配分した譲渡益六億一七八〇万四五七二円及び那須ハイランドワインに配分した譲渡益八八二五万七七九六円の合計金額七億〇六〇六万二三六八円は、右二社に対する法人税法三七条五項に定める寄付金の額に該当し損金に当るので、本件事業年度の所得金額から減算した。

6  別表(二)の減算金額たる損金算入繰越欠損金について

昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の繰越欠損金五一〇六万〇一七二円、昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の繰越欠損金九六五五万四〇八五円及び昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の繰越欠損金五九〇五万六一五二円の合計二億〇六六七万〇四〇九円(別表(八)の合計欄)を本件事業年度の所得金額から減算した。

7  本件賦課決定について

被告は、本件事業年度分の本件更正をしたことに伴ない国税通則法六五条一項、一一八条三項の規定に基づき、本件更正により納付すべき本税の額一億九四九九万〇七〇〇円に一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税の賦課決定をしたものであるから、本件賦課決定処分は適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1のうち、原告の本件事業年度の所得金額が別表(二)記載のとおりである事実は否認し、その余の主張は争う。

2  同2(一)のうち、被告主張の本件譲渡が原告名義でなされたこと及び原告が二億八七八三万八八五七円を原告の収入金額に計上し、残代金相当額一一億五一三五万五四二七円を収入金額に計上しなかつたことは認めるが、原告が本件譲渡の取引主体であること及び本件土地の所有者であつたことは否認し、残代金額が原告の本件事業年度の収入である旨の主張は争う。

同(二)の事実は認める。

同(三)冒頭の主張は争う。

同(三)(1)アの原取得地の売買契約が宇野亨を介して原告名義で締結された事実は認めるが、原告が取引の主体である事実は否認する。

同(三)(1)イの事実は認める。

同(三)(2)のうち、原告が被告主張の借入れ及び支払の実質的主体である事実は否認し、その余の事実は認める。

同(三)(3)のうち、被告主張の各土地につき、原告及び大洋興産名義の所有権移転登記がそれぞれ経由されている事実は認めるが、右登記に合致する態様で原告が実体においても第一次原告名義地を取得したことは否認する。

同(三)(4)のうち、原告が第一次原告名義地を取得した点は否認し、その余の事実は認める。

同(三)(5)アのうち、第一次原告名義地につき昭和四五年一月二〇日付けで阿部土地建物に買戻特約付きで代金五億五〇〇〇万円で売買する旨の契約書が原告名義で作成されていること、右土地につき阿部土地建物の所有権移転登記が経由されたこと及び右の売買契約書は全く形式上の書面にすぎず売買代金の授受は行われていないことは認めるが、右各行為の主体が原告である点は否認する。

同(三)(5)イのうち、阿部土地建物名義で、昭和四七年三月二二日、第一次原告名義地に隣接していた旧国有地が買い受けられている事実は認めるが、右買受けの主体が原告である点は否認する。

同(三)(5)ウは認める。

同(三)(5)エのうち、各費用の支払が形式上大洋興産あるいは那須ハイランドワインからの仮受金を資金として行われた会計処理となつていること、右仮受金が各年度末において、大洋興産あるいは那須ハイランドワインに対する債権として存在する仮払金との相殺によつて清算された形になつていることは認めるが、右の処理が実体を伴うものである点は否認する。

同(三)(5)オの事実は認める

同(三)(6)のうち、本件譲渡に際し、本件土地の登記簿上の所有名義がすべて原告名義であつたこと、本件譲渡の各契約締結及び引渡しがすべて原告名義でなされたこと並びに右の契約締結等について北葉地所株式会社の近藤社長が事務処理を代理・代行したことは認めるが、原告が本件譲渡の主体である点は否認する。

同(三)(7)の事実は認める。

同(三)(8)のうち、原告が、阿部土地建物に所有名義を提供させていた主体である点及び阿部土地建物から本件土地を再取得した主体である点は否認し、その余の事実は認める。

同(三)(9)のうち、本件譲渡についての原告の取締役会の承認に関する取締役会議事録が作成され財団法人千葉県都市公社及び財団法人千葉市開発財団に提出されたことは認めるが、それが実体を伴うものである点は否認する

同(三)(10)のうち、本件土地の取得及び本件譲渡に関する一連の行為が宇野亨の関与の下に行われたこと及び同人が原告の実質的オーナーであることは認めるが、右各行為が原告のために行われたことは否認する。

同(三)(11)の各事実は、いずれも認める。

3  同3(一)の事実は認める。

同(二)冒頭の主張は否認する。

同(二)(1)の事実は、いずれも認める。

同(二)(2)のうち、本件土地の譲渡収益の全額が原告に帰属すべきとの主張は争うが、右主張を前提とした場合に三社の各事業年度の所得金額が被告主張のとおりの額になることは認める。

同(二)(3)の事実は認める。

同(二)(4)の事実は否認する。

同(二)(5)、同(三)及び(四)の各主張は争う。

4  同4ないし7の各主張は争う。

五  原告の反論

1  本件土地の大部分を含む原取得地は、大洋興産が東邦工業から買い受けたものであるが、以下の経緯から、取引の便宜上、原告に買受人名義を提供させ、更に融資銀行の意向により原取得地を大洋興産と原告との間で二分し各所有権移転登記を経由したものである。

(一) 原取得地の売買交渉は、売主東邦工業の代理人鈴木拓郎と買主大洋興産の代表取締役宇野亨との間で行われたが、昭和四三年一二月ころ両者間で原取得地について従前の工業地域から住居地域への都市計画用途地域の変更を条件とする売買予約が成立し、買主大洋興産は、手付金として同社振出、金額一億円、支払期日六か月後の約束手形一通を売主側に交付した。

(二) 売買代金額は、売買完結までに両者間で協議決定することとされていたが、売主側の提示金額八億五〇〇〇万円に対し、買主側が相当額の値引きを要求したところ、結局、値引きに代わる手数料を買主が受領する形式をとることになつたため、宅地建物取引業免許を有する大洋興産が右の手数料を受領し、同免許を有しない原告に買受人名義を提供させた。

大洋興産と東邦工業は、原取得地の売買代金を八億三五〇〇万円としたうえ、大洋興産が手数料の名目で一二〇〇万円を受領する旨合意し、原告を形式上の買主として売買契約を締結した。

(三) 大洋興産は、形式上の買主である原告への所有権移転登記は省略し、売主から直接自社への移転登記をする予定で、かねて平和相互に対し原取得地の買受代金の融資を申し込んでいたが、同銀行側が「大洋興産一社に八億円以上の融資をすることはできないので、他に一社、借受人を準備してもらいたい。」旨の意向を示したので、双方協議の結果、大洋興産と原告との二社に分割した形式で同銀行から融資を受け、原取得地をほぼ等分して右二社が各所有権移転登記を経由し、各所有名義地に各融資金額を極度額とする根抵当権を設定することとした。

(四) 大洋興産は、第一次原告名義地分の代金についても、借入れの交渉及び手続等の一切を処理し、大洋興産において平和相互からの融資金によつて原取得地の買受代金全額八億三五〇〇万円を東邦工業に対して支払つた。

2  本件土地の保有状況等について

(一) 第一次原告名義地について転売の見込みがなかつたことから、融資銀行の平和相互は、大洋興産に対し、第三者による借替えの形式をとつて、原告名義借入金五億五〇〇〇万円の完済処理を強く要請した。

(二) 大洋興産は、阿部土地建物に対し右借受名義の提供を依頼したうえ、昭和四五年一月一六日、同銀行から阿部土地建物を借受名義人として三億円の貸出しを受け、その内金二億五〇〇〇万円と、外に系列会社の那須ハイランドワインから二億円(同銀行から借り受けたもの)の提供を受け、かつ、別途一億円を調達し、これを以つて同月二四日までに、形式上、原告名義借入金五億五〇〇〇万円を完済した。

そして、大洋興産は、右借替え処理に対応した取引の外形を整えるため、第一次原告名義地につき、同年同月二〇日付けで、売主を原告、買主を阿部土地建物とする代金五億五〇〇〇万円の売買契約書を作成して、その旨の所有権移転登記を経由した。

(三) 大洋興産は、第一次原告名義地が阿部土地建物への所有名義移転後二年を経過しても転売の見込みがなかつたため、平和相互から、他銀行からの借替えによる返済処理を要請されるに至つた。

そこで、大洋興産は、昭和四七年二月二八日、千葉相互銀行(以下「千葉相互」という。)から阿部土地建物名義で六億五〇〇〇万円を借り受け、その内金四億五〇〇〇万円と、外に那須ハイランドワインから同社が右同日に平和相互から借り受けた一億円の提供を受け、これを以つて阿部土地建物名義の平和相互からの借入金五億五〇〇〇万円の完済処理をした。

(四) 大洋興産は、昭和四七年三月二二日、阿部土地建物名義で旧国有地を買い受けた。右買受けに関連した費用八一七万〇〇八〇円は、すべて大洋興産が支払つた。

(五) 以上のように、第一次原告名義地は、大洋興産の所有であるが、これを便宜上原告所有名義とし、次いで便宜上阿部土地建物名義としたものであり、また、右(四)の旧国有地も大洋興産の所有であるが便宜上阿部土地建物名義としていたものである。

ところで、

(1) 大洋興産は、右各土地のうち七一八一・九三平方メートルについて、阿部土地建物から原告所有名義に登記を移転(原因は錯誤)したうえ、昭和五〇年六月二三日、代金一億六〇〇〇万円で渡辺パイプ株式会社(以下「渡辺パイプ」という。)に売り渡した。

(2) そして、大洋興産は、右の譲渡収入及び原価を、所有者である自社が七割、所有名義を提供するなどした原告が二割、金融上の協力をした那須ハイランドワインが一割の各割合によつて配分した。

(3) 右三社は、右各配分金額を収入金額として計上した法人税確定申告書を法定期限内に各所轄税務署長に提出したが、右の各申告に対して調査及び更正は行われないまま現在に至つている。

(4) 阿部土地建物の所有名義としていた残余の土地である本件土地についても、大洋興産がこれを原告所有名義としたうえ本件譲渡を行い、その譲渡収入及び原価につき同様の配分を行つたことは、後記3及び4のとおりである。

(六) 阿部土地建物に右各土地の所有名義を提供させていた期間における関連費用は、次のとおり、原則として大洋興産が負担していた。

(1) 平和相互及び千葉相互からの借入金の利息は、原則として大洋興産が各融資銀行に直接支払をしていたが、例外的に一部を阿部土地建物が立替支払をした後、大洋興産が清算処理したものもあつた。

(2) 固定資産税等については、昭和四五年一月から同四六年一二月までの期間は、阿部土地建物が一旦立替支払をした後、大洋興産に請求し、同社が清算払をしていたが、同四七年一月以降、原則として阿部土地建物は立替支払をしないで請求書等を大洋興産に回付し、これに基づいて同社が直接支払をした。なお、一部については、那須ハイランドワインが負担した分もあり、阿部土地建物が立替支出した例外も存在している。

(3) 被告主張(三1(三)(5)ウ及びエ)の会計処理は、「本件土地の関連費用は原告の帳簿を通す。」との大洋興産代表取締役宇野亨の方針の下にとられた措置である。すなわち、大洋興産らが支出したこれらの費用は、原告の借入金となるものではなく、大洋興産らが出したまま実質上は清算されることもない性質のものであり、原告の帳簿上、仮受金として受け入れる外なく、その相手勘定として支払利息、公租公課などの費用に計上する以外、適当な処理方法もなかつたことから、いわば会計処理上の便法としてとらえた措置である。

(4) したがつて、被告主張(三2(三)(5)エ)の原告の各事業年度末における仮受金と仮払金との相殺処理は、単なる帳簿上の操作であつて、実質上の清算は行われていない。すなわち、各事業年度末において、大洋興産などからの仮受金の累積を避けるための帳簿上の操作として、実際には存在していない同社らに対する仮払金を計上し、両者を相殺する処理が行われていたのであつて、実質上、仮受金の清算がなされていたものではない。

被告は、原告の大洋興産に対する仮払金の明細を指摘するのみで同社からの仮受金との対比検討をしていない。そこで、各事業年度における原告の大洋興産に対する仮払金の期中増加額の内訳を、同社からの仮受金との対比において表に示すと、別表(九)記載のとおりとなり(同表の付表(1)ないし(4)は、各事業年度別の大洋興産に対する仮払金の期中増加額の内訳分析表である。)、その内容は次のとおりである。

ア 昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度

同年度の仮払金の期中増加額一億一八九一万二三七九円のうち、一億〇八九一万二三七九円は、大洋興産からの仮受金として原告の預金口座に入金した資金がそのまま(付表(1)の番号1及び4の場合は預金利息も付加して)仮払金として大洋興産に戻されているもので(以下この関係を「仮受金連動」という。)、その額は仮払金全体の九二パーセントを占めている。

これらの資金操作は、取引銀行に対する原告の信用をつけるために、形式上、一旦、原告の預金口座に入金したうえ、同日あるいは一定期間経過後、その資金を大洋興産が引き上げたものであり、原告の資金による大洋興産に対する支払ではない。

大洋興産に対する仮払金のうち、残りの八パーセントに相当する一〇〇〇万円は、原告の資金を原資とする仮払金であるが、これは大洋興産からの仮受金の期中増加額一億八九三九万八五四五円のわずか五パーセントにすぎない。

イ 昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度

同年度における大洋興産からの仮受金の期中増加額は七三六七万六二三四円もあつたのに対し、大洋興産に対する仮払金は同期中には発生していないので、同期における仮受金の清算は行われていない。

ウ 昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度

同年度における仮払金の期中増加額六三七〇万五三一五円のうち仮受金連動額は一一四二万七四八四円で全体の一八パーセントを占めている。残りの八二パーセントに相当する五二二七万七八三一円は原告の資金を原資とする仮払金であるが、これは仮受金の期中増加額九九〇九万七〇二六円の五三パーセントに相当する金額であるから、残りの四七パーセント相当分は清算されないままになつている。

エ 昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度

同年度における仮払金の期中増加額五七六七万二七四一円のうち、仮受金連動額は一二一万六二〇六円で全体の二パーセントにすぎないが、渡辺パイプに対する譲渡収入の配分に対応する大洋興産分の原価配分額三六一九万六五三五円が含まれており、これが全体の六三パーセントを占めている。残りの三五パーセントに相当する二〇二六万円は原告の資金を原資とする仮払金であるが、これは同期中における仮受金の増加額一億五一七五万〇八五九円の一三パーセントにすぎず、残りの八七パーセント相当分は未清算のままとなつている。

オ 本件事業年度

本件事業年度における仮払金の増加額六億二〇一一万〇七一八円のうち、全体の一二パーセントに相当する七二五〇万円は仮受金連動額で、また、六三パーセントを占める三億八九六三万一四二七円は、本件譲渡に係る譲渡収入の配分に対応する大洋興産分の原価配分額である。残りの二五パーセントに相当する一億五七九七万九二九一円は原告の資金を原資とする仮払金であるが、これは仮受金の期中増加額六億〇七〇六万七〇三八円の二六パーセントにすきず、残りの七四パーセント相当分は清算されていない。

以上のとおり、原告の資金を原資として本来の仮払金と、各事業年度における大洋興産からの仮受金の増加額とを対比すると、各事業年度とも、仮払金を清算したとはいえない。

3  本件土地の譲渡経緯について

大洋興産は、本件土地の所有名義を阿部土地建物から原告に戻したうえ、原告に売渡人名義を提供させて、被告主張(三2(三)(6))のとおりの本件譲渡を行つた。なお、北葉地所株式会社の近藤社長に依頼して事務処理を代行させたのも、大洋興産であつて原告ではない。

原告は、所有名義及び受渡人名義を提供した関係上、本件譲渡の買主である財団法人千葉県都市公社及び財団法人千葉市開発財団との間の売買契約書並びに右両名に対する土地引渡書、代金請求書及び領収書等について単なる形式上の売渡名義人となり、また、前記近藤社長に対する委託書についても同様、形式上の作成名義人となつたほか、形式上の譲渡承認に関する取締役会議事録を作成するなどした。

4  原告ら三社の収益配分について

(一) 大洋興産は、本件土地の譲渡収入及び原価を、所有者である大洋興産が七割、名義提供者である原告が二割、金融協力者である那須ハイランドワインが一割の各割合で配分した。

(二) 右の配分基準は、前記の渡辺パイプに対する売却の際と同一の基準であり、右三社間では確立された配分基準である。

(三) 被告は、本件土地の譲渡益の配分は、原告ら三社が不当に法人税の課税を免れようとする意図の下に行つたものである旨の主張(三3(二))するが、繰越欠損金の一部を当期控除額として損金の額に算入することは、それだけ後続事業年度に繰り越す欠損金額を減少させて、その分だけ法人税の負担を増すことになるのであり、原告ら三社全体として当期における法人税負担がなかつたとしても、後続事業年度について見た場合は、各繰越欠損金の一部を当期控除額として損金の額に算入した分だけ法人税の負担を増加させたことになる。

(四) 被告は、本件土地の譲渡益の配分につき、原告が本件土地の譲渡益の八割相当分を大洋興産と那須ハイランドワインに寄付した旨の主張をする(被告主張三3(三))。

しかし、収益の八割相当分を他社に寄付するということは、およそ営利企業の行為として実際にあり得ることではなく、経済的実質に反する。

5  結論

以上のとおり、本件土地を別表(三)記載のとおりに売却譲渡したのは、大洋興産であり、原告は単に所有名義及び売渡人名義を提供したにすぎない。本件土地の譲渡益は、すべて大洋興産に帰属するものであり、これを原告に帰属するとしてなされた本件更正は、実質所得者課税の原則(法人税法一一条)に反し、違法な処分である。

六  原告の反論に対する認否

1  原告反論1の各事実のうち、大洋興産が原取得地の買受人であり、その買受代金全額を大洋興産が支払つたことは否認し、その余は不知。

2  同2(一)の事実は不知。

同(二)のうち、平和相互が昭和四五年一月一六日阿部土地建物を借受名義人として三億円の貸出しをしたこと、那須ハイランドワインが二億円を提供したこと、同月二四日までに同銀行に原告名義借入金五億五〇〇〇万円が完済されたこと及び第一次原告名義地につき、形式上、売主を原告とし買主を阿部土地建物とする代金五億五〇〇〇万円の同年同月二〇日付け売買契約書が作成され、その旨の所有権移転登記が経由されたことは認め(但し、行為の主体が大洋興産であるとの点は否認する。)、その余は不知。

同(三)のうち、第一文は不知。第二文のうち、昭和四七年二月二八日に千葉相互が阿部土地建物を借受名義人として六億五〇〇〇万円を貸し出したこと(ただし、大洋興産が借主である点は否認する。)及び右同日に平和相互からの阿部土地建物名義の借入金五〇〇〇万円が完済されたことは認め、その余は不知。

同(四)のうち、買受けに関連した費用八一七万〇〇八〇円を大洋興産が支払つたことは不知、その余は否認する。

同(五)冒頭のうち、各土地の所有名義は認めるが、大洋興産がその所有者であることは否認する。同(五)(1)のうち、原告主張の登記手続及び渡辺パイプへの売渡しがなされたことは認めるが、右を大洋興産がしたとの点は否認する。同(五)(2)のうち、大洋興産が所有者で原告が所有名義提供者にすぎないことは否認し、その余は認める。同(五)(3)のうち、各所轄税務署長が原告らの各申告に対し調査をしなかつたことは否認し、その余は認める。

同(六)(1)のうち、例外的に阿部土地建物が一部立替支払をしたとの点は不知、その余は否認する。

同(六)(2)のうち、昭和四五年一月から同四六年一二月までの期間、阿部土地建物が一旦立替支払をした後に大洋興産に請求したとの点、同四七年一月以降は原則として阿部土地建物は立替支払をしないで請求書等を大洋興産に回付したこと、一部については那須ハイランドワインが負担した分もあり、阿部土地建物が立替支出した例外も存在しているとの点は不知、その余は否認する。

同(六)(3)及び(4)の各事実は否認する。

3  同3のうち、大洋興産が本件譲渡の主体であり、原告は単なる名義提供者であるとの点は否認し、その余は認める。

4  同4(一)のうち、本件土地の譲渡収入及び原価の配分割合は認め、その余は否認する。

同(二)のうち、配分割合が渡辺パイプに対する売却の際と同一であることは認めるが、それが三社間で確立された配分基準であるとの点は否認する。

同(三)の主張は認める。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件更正の適法性について判断する。

1  被告の主張2の加算金額たる土地譲渡収入計上もれについて

(一)  本件土地が、原告名義で別表(三)のとおり合計一四億三九一九万四二八四円で売却譲渡されたこと及び右合計譲渡代金額のうち原告は二億八七八三万八八五七円を本件事業年度の原告の収入金額に計上したが、残代金相当額一一億五一三五万五四二七円を収入金額に計上しなかつたことは、当事者間に争いがない。

しかし、原告は、原告が本件土地の所有者であつたこと及び本件譲渡の取引主体であることを否認し、原告は単に所有名義及び売渡人名義を提供したにすぎず、本件土地の所有者及び本件譲渡の取引主体は大洋興産であり、したがつて本件土地の譲渡益はすべて大洋興産に帰属するものであると主張するので検討する。

(二)  本件土地の取得、保有及び譲渡の経緯につき、次の各事実はすべて当事者間に争いがない。

(1) 昭和四四年六月四日、本件土地の大部分を含む原取得地について、売主を東邦工業とし買主名義を原告として、代金を八億三五〇〇万円とする売買契約が、宇野亨を介して締結された。

(2) 右代金については、右同日、平和相互から原告名義で五億五〇〇〇万円の借入れがなされ、右のうちから四億一八五二万八〇〇〇円が右売買代金の一部として東邦工業に対して支払われ、残代金四億一六四七万二〇〇〇円は、大洋興産が、同年同月七日、平和相互から大洋興産名義で五億四〇〇〇万円を借り入れ、その借入金のうちから東邦工業に対して支払つた。

(3) 原取得地について、これをほぼ二等分し、その一方である本件土地の大部分に該当する第一次原告名義地については原告名義の、他方については大洋興産名義の各所有権移転登記がそれぞれ経由された。

(4) 原告は、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税確定申告書に添付された決算書に、第一次原告名義地を原告の所有地として、その取得価額四億二五〇二万四九〇八円(購入代金四億一八五二万八〇〇〇円に登録税の額六四九万六九〇八円を加算した金額)をたな卸資産として計上している。

(5) 平和相互が昭和四五年一月一六日阿部土地建物を借受名義人として三億円を貸し出し、那須ハイランドワインが二億円を提供し、原告名義の平和相互からの借入金五億五〇〇〇万円が同年同月二四日までに完済された。

(6) 第一次原告名義地について、昭和四五年一月二〇日付けで阿部土地建物に買戻特約付で代金五億五〇〇〇万円で売買する旨の原告名義の売買契約書が作成され、同土地につき阿部土地建物への所有権移転登記が経由されたが、右の売買契約書は全く形式上の書面にすぎず、売買代金の授受は行われていない。

(7) 昭和四七年二月二八日に千葉相互が阿部土地建物を借受名義人として六億五〇〇〇万円を貸し出し、同日、平和相互からの阿部土地建物名義の借入金五億五〇〇〇万円が完済された。

(8) 昭和四七年三月二二日、第一次原告名義地に隣接していた旧国有地七六一・六一平方メートルが、阿部土地建物名義で買い受けられた。

(9) 第一次原告名義地及び旧国有地に係る関連費用のうち、その主なものである阿部土地建物名義で銀行融資を受けたことに伴う融資銀行への支払利息及び固定資産税等は、いずれも原告の各事業年度における帳簿上、各支払利息及び公租公課勘定に原告の費用として計上されている。

(10) 右費用の支払は、大洋興産あるいは那須ハイランドワインからの仮受金を資金として行われた形の会計処理がなされているが、右仮受金は、各年度末において、原告から大洋興産あるいは那須ハイランドワインに対する仮払金との相殺によつて清算された旨の会計処理がなされており、かつ、原告は右の会計処理どおりの決算書類に基づいて昭和四七年度ないし本件事業年度における各確定申告を行つている。

(11) 原告の各事業年度における大洋興産に対する仮払金の期中増加額、その相手勘定科目別内訳及び右仮払金が各期中において大洋興産からの仮受金と相殺されている状況が別表(五)のとおりとなり、同表の仮払金の期中増加額の内訳に対応して原告の総勘定元帳中の相手勘定科目・伝票等との突合せにより、各期中の個々の仮払金の発生に係る仕訳を解明し、相手勘定科目等を含めた個々の仮払金の発生状況を示すと、別表(五)の付表(1)ないし(6)のとおり(事実摘示三2(三)(5)エ(ア)ないし(キ)のとおり。)となる。

(12) 本件譲渡においては、本件土地の登記簿上の所有名義を阿部土地建物から原告名義に戻したうえ、各売買契約の売渡名義人及び土地引渡書の名義人等はすべて原告名義でなされ、右契約の締結等は北葉地所株式会社の近藤社長が事務処理を代行したが、同社長に対する委託書の名義人も原告である。また、本件譲渡による代金のうち、別表(三)中の財団法人千葉県都市公社へ譲渡した分については、昭和五一年八月五日に四億円、同月二五日に二億七九五五万三五二三円、同年九月八日に三六八二万五六二四円の各支払があり、右代金のいずれについても原告名義の請求書及び領収証が発行されており、財団法人千葉市開発財団へ譲渡した分については、同年八月五日に四億円、同月二五日に二億九〇四四万二一三七円、同年九月八日に三二三七万三〇〇〇円の各支払があり、右支払はいずれも千葉相互本店の原告の普通預金口座への振込みの方法によりなされている。

(13) 原告の本件事業年度の総勘定元帳中の仕入勘定の昭和五一年二月二八日及び同年三月九日欄に、原告が本件土地を取得したとして本件譲渡に係る譲渡原価五億五七四一万六三二五円の大部分に当たる五億三四七五万六三二五円が計上されている。

(14) 本件譲渡につき、原告の取締役会の承認に関する取締役会議事録が作成され、買主である財団法人千葉県都市公社及び財団法人千葉市開発財団に提出されている。

(三)  法人税法一一条は「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」と規定するから、法人の所得の有無とその帰属を判定するについては、単に当事者によつて選択された法律的形式だけでなく、その経済的実質をも検討・吟味すべきことは当然であるが、当事者によつて選択された法律的形式が経済的実質から見て通常採られるべき法律的形式とは明らかに一致しないものであるなどの特段の事情がない限り、当事者によつて選択された法律的形式は原則として経済的実質をも表現しているものという事実上の推定が働き、右の法律的形式と経済的実質との不一致が明らかに立証された場合において初めて右の推定を覆し、右立証された経済的実質に従つて法人税法上の法律関係が確定されることになると解するのが相当である。これを本件についてみるに、前記(二)の(1)ないし(4)の各事実から認められる本件譲渡に係る法形式によれば、本件土地を取得し、これを譲渡した主体は明らかに原告であり、したがつて、本件譲渡に係る譲渡益は、すべて原告に帰属すべきものであることが明白に推認されるところである。

(四)  そこで、右の推定を覆すべき事実関係の存否についての検討を進める。

(1) 第一次原告名義地の取得経緯については、前記当事者間に争いのない事実のほか、成立に争いのない甲第一、第二号証、第三号証の一ないし三、乙第二七、第二八号証、原本の存在と成立に争いのない乙第一一号証の一ないし一八、第一二号証の一、二並びに証人宇野亨、同大木豊、同近藤基及び同島田薫の各証言を総合すると、次の事実が認められる。

<1> 原取得地の売買交渉は、当時原取得地の所有名義人であつた東邦工業の代理人鈴木拓郎と宇野亨との間で行われた。昭和四三年一二月ころ、両者間で原取得地について従来の工業地域から住居地域への都市計画用途地域の変更を条件とする売買予約が成立した。宇野亨は、そのころ、手付金の支払のため、自己が代表取締役をしている大洋興産名義の金額一億円の約束手形を振り出した。

<2> 売買代金については、右売買予約当時においては未だ決定されておらず、宇野亨において、原取得地は半年ないし一年程度の期間で転売できるものではなく、その間の銀行からの融資の利息等を考えると、当初の売主側の提示額では高すぎるとの思惑もあつて、売買完結までに両者間で協議決定することとされ、値引き交渉が続けられた。

<3> 宇野亨は、原取得地を買い受けるに当たつては、当初から平和相互に対し買受けた代金の融資につき打診していたところ、銀行側は、工業地域では担保能力がないので都市計画の用途地域が住居地域に変更されなければ融資できない旨の意向を示した(そのため<1>のとおりの売買予約の形式をとることになつた。)。

また、相互銀行法一〇条の制限により、大洋興産一社だけでは買受け代金の全額の融資が受けられない見込みであつたことから、宇野亨は、大洋興産の系列会社で同人がその実質的オーナーである原告をも銀行融資の借受人とすることとし、大洋興産と原告との二社に分割した形式で同銀行から融資を受け、原取得地をほぼ等分して大洋興産と原告との各所有名義地とし、その各々に各融資金額を極度額とする根抵当権を設定することにした。

<4> 売買代金額の交渉の過程で売主側の提示額が八億五〇〇〇万円まで下がつたが、宇野亨は更に値引きを要求し、結局買主側が値引きに代わるものとして手数料名義で一二〇〇万円を受領することとし、売買代金は八億三五〇〇万円とする旨の合意が成立した。そのため、宅地建物取引業免許を有する大洋興産が右の手数料を受領し、同免許を有しない原告が原取得地全部の買受名義人となることとなり、昭和四四年六月四日、売買代金八億三五〇〇万円、買主を原告とする原取得地の売買契約が成立した。

<5> 右同日、平和相互から原告名義で五億五〇〇〇万円が融資されたが、その借入れ交渉及び関係書類の作成は宇野亨が行つた。また、同年同月七日に同銀行から大洋興産名義で五億四〇〇〇万円が融資された分についても、その交渉及び関係書類の作成は宇野亨が行つた。

<6> 右各借入金により、原告名義で四億一八五二万八〇〇〇円、大洋興産名義で四億一六四七万二〇〇〇円が、代金として支払われた経過は、次のとおりであつた。

原告名義の借入金五億五〇〇〇万円は、原告の平和相互の普通預金口座に入金されたうえ、昭和四四年六月四日に五〇〇〇万円、同月七日に一二〇〇万円及び五六五二万八〇〇〇円、以上合計一億一八五二万八〇〇〇円の払戻請求が原告名義でなされ、右各金額の自己宛小切手が同銀行より振り出されて東邦工業に譲渡され、また、同月七日には三億円の払戻請求が原告名義でなされ、右金員が払い戻されて東邦工業に支払われた。

大洋興産名義の借入金五億四〇〇〇万円は、同社の平和相互の普通預金口座に入金されたうえ、同月七日に四億一六四七万二〇〇〇円が払い出され、右金員により同銀行から右金額の自己宛小切手の振出を受け、これを東邦工業に譲渡して支払つている。

<7> 昭和四四年当時、原告及び大洋興産の決算記帳を担当していた高橋税務会計事務所の島田薫(以下「島田」という。)は、原取得地を原告と大洋興産とで折半して取得していながら右<4>のとおり原告名義で原取得地全部を買い受けたことになつていたので、大洋興産取得分については、取得原価で原告から大洋興産に対して譲渡したことにして記帳処理を行つたが、右譲渡は実際の売買代金の授受を伴わない形式上のものであつた。

<8> 島田は、東邦工業から原告が所有権登記を受けた第一次原告名義地については、以後、宇野亨の指示を受けるまでは原告の所有地として経理処理を行つた。右の土地は昭和四五年一月二〇日付けで阿部土地建物に所有名義が移転されているが、その際に島田が経理上原告の売上げに計上したところ、後に宇野亨から阿部土地建物には名義を借りたもので売上げにはならない旨指摘されたが、そのときも宇野亨は右土地が大洋興産の所有であつて原告の仕入にのせること自体がおかしいとは言つていない。

(2) 本件土地の保有状況については、前記当事者間に争いのない事実のほか、成立に争いのない甲第二〇号証の二、第二一号証の四、乙第一五号証、第二七、第二八号証、原本の存在と成立に争いのない甲第七号証の一ないし三、第八号証の一、二(但し、書込み部分を除く。)乙第一三号証の一、二、第一七号証の二、第一八号証の一ないし七、第二〇号証の四、五、第二二号証の四、五、第二四号証の四、五、第二六号証の五、六、証人島田薫の証言によつて成立(甲第六号証、第一〇号証、第一八号証の二については厚本の存在も)の認められる甲第六号証、第八号証の一、二の書込み部分、第九、第一〇号証、第一八号証の一ないし三並びに証人宇野亨、同島田薫及び同大木豊の各証言を総合すれば、次の事実が認められる。

<1> 第一次原告名義地については、取得後約半年を経過しても転売の見込みが立たず、平和相互からの原告名義の借入金返済の目処がつかなかつたことから、同銀行は宇野亨に対し、昭和四五年一月ころ、第三者の借替えるによる原告名義借入金五億五〇〇〇万円の返済処理を要求した。

<2> 宇野亨は、阿部土地建物に対し右の借入金名義の提供を依頼し、同時に原告と同じく宇野亨が実質上のオーナーであり大洋興産の系列会社で同人が金融のために利用している那須ハイランドワインから二億円の提供を受けることとし、昭和四五年一月一六日、平和相互から阿部土地建物を借受名義人として三億円の融資を受け、那須ハイランドワインから二億円の提供を受けて同月二四日までに原告名義の借入金五億五〇〇〇万円を完済した。そして、第一次原告名義地について、形式上、売主を原告とし買主を阿部土地建物とする代金五億五〇〇〇万円の売買契約書が作成され、その旨の所有権移転登記が経由された。

<3> 第一次原告名義地の所有名義が阿部土地建物へ移転されてから二年経過しても同地の転売の見込みが立たなかつたため、宇野亨は平和相互から、他銀行からの借替えによる融資金の返済処理を要請されるに至つた。そこで、宇野亨は、昭和四七年二月二八日、千葉相互から阿部土地建物名義で六億五〇〇〇万円を借り受け、更に那須ハイランドワインにおいて同日平和相互から借り受けた一億円の提供も受けてうち五億五〇〇〇万円を阿部土地建物名義の平和相互からの借入金の返済に当て完済処理した。

<4> 宇野亨は、第一次原告名義地に隣接する旧国有地が払い下げられることになつた際、国有地の払下げは周囲の土地所有者に優先的になされることから、第一次原告名義地の所有名義人である阿部土地建物名義で払下げを受けることとし、昭和四七年三月二二日右国有地を国から買い受けた。右買受けにかかる費用は八一七万〇〇八〇円であつた。

<5> 第一次原告名義地及び旧国有地について、阿部土地建物に所有名義を提供させていた期間において、平和相互及び千葉相互からの借入金の利息は、主として大洋興産が各融資銀行に支払つたが、一部は阿部土地建物が立替支払をした後に大洋興産が清算処理したものもあつた。また、固定資産税等については大洋興産及び那須ハイランドワインが支出した。

<6> 島田は、原告の決算処理に際しては、各事業年度の終了後一年分の資料を集め、取引銀行から当座預金の照合表等を取り寄せるなどしたうえ総勘定元帳を作成していたが、資金の出入り不明のときは宇野亨に一つ一つ聞いて処理し決算書類を作成していた。

島田は、昭和四五年一月二〇日付けの阿部土地建物への第一次原告名義地の所有名義移転につき、右が単なる借受人名義の提供であることを認識していなかつたところから、右の所有名義移転の売買契約書に基づき原告を売主として売上利益を計上し、したがつて右<5>の借入金の利息及び固定資産税等については原告の経費として計上していなかつたが、後に宇野亨から右の所有名義移転は売買ではなく単なる名義借りである旨指摘され、以後阿部土地建物とも相談のうえ、阿部土地建物が既に支払つていた借入金利息等を除いて爾後の阿部土地建物名義の借入利息及び固定資産税等は、すべて原告の経費に計上した。但し、これらの経費は、大洋興産及び那須ハイランドワインにより相手方に支払われたものであるため、原告の帳簿上は仮受金勘定を立てて処理した。

<7> 右仮受金は、各年度末において、会計処理上、原告から大洋興産あるいは那須ハイランドワインに対する仮払金との相殺によつて清算処理された形になつており、また、原告の各事業年度における大洋興産に対する仮払金の期中増加額、その相手勘定科目別内訳及び右仮払金が各期中において大洋興産からの仮受金と相殺されている状況が別表(五)のとおりとなり、同表の仮払金の期中増加額の内訳に対応して原告の総勘定元帳中の相手勘定科目・伝票等との突合せにより各期中の個々の仮払金の発生に係る仕訳を解明し、相手勘定科目等を含めた個々の仮払金の発生状況を示すと、別表(五)の付表(1)ないし(6)のとおりとなるが、他方、各事業年度における原告の大洋興産に対する仮払金の期中増加額の内訳を大洋興産からの仮受金との対比において表に示すと別表(九)記載のとおりとなり、更に各事業年度別の原告の大洋興産に対する仮払金の期中増加額の内訳分析を表に示すと別表(九)の付表(1)ないし(4)記載のとおりになる。別表(九)及び同表付表(1)ないし(4)のうち、大洋興産からの仮受金として原告の預金口座に入金した資金がそのまま仮払金として大洋興産に戻されている関係(以下この関係を「仮受金連動」という。)が相当数額にわたつて存在し、前記の仮受金と仮払金との相殺処理が現実に行われたのではないことを窺わせるものがあるけれども、昭和四八事業年度を除き毎年、原告の現実の資金をもつて大洋興産に仮払金が動いていることも事実であり、また、右の仮受金連動のような資金操作は、取引銀行に対する原告の信用をつけるため、宇野亨により行われたものである。原告の各事業年度末における仮受金と仮払金の相殺処理も、仮受金、仮払金の双方の額が累積されるのを回避するために島田によりとられた処理方法であり、宇野亨の承認の下に行われたものである。

(3) 本件譲渡の経緯については、前記当事者間に争いのない事実のほか、成立に争いのない乙第一号証の二、第二号証の一、二、第三〇ないし第三四号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第五号証、第九号証並びに証人宇野亨、同島田薫及び同近藤基の各証言を総合すれば、次の事実が認められる。

<1> 宇野亨は、本件土地の所有名義を阿部土地建物から原告に戻したうえ、本件譲渡を行つた。その際、宇野亨は北葉地所株式会社社長の近藤基に対し、原告名義で本件土地の売買契約の締結に関する代理権を授与した。

<2> 近藤基は、財団法人千葉県都市公社及び財団法人千葉市開発財団の各担当者と頻繁に交渉したが、その際、宇野亨の許可を得て作成した「株式会社千葉農林近藤基」なる名刺を使用するなど、終始原告の代理人として行動した。

<3> 財団法人千葉県都市公社及び財団法人千葉市開発財団の各担当者は、いずれも本件譲渡における土地所有者及び売主は原告であると認識して契約締結に当たつた。

<4> 買主との間の売買契約、引渡し、代金の請求及び領収等が、いずれも原告名義で行われたことは、前記のとおりである。

(4) 以上の一連の経緯において、宇野亨の役割及びこれと原告との関連を見るに、当事者間に争いがない事実及び前記(1)の冒頭掲記の証拠によつて認められるところは、次のとおりである。

<1> 宇野亨は、大洋興産の代表取締役である。

<2> 宇野亨は、原告の設立に際して出資を行い、その株式の多数を所有し、原告の代表取締役の記名印及び代表者印を保管し、原告の会計処理及び税務申告に必要な事項を指示し承認を与える地位にある。

<3> 昭和三二年六月から同五一年三月までの間の原告の代表取締役は大木豊であつたが、同人は名目だけの代表者にすぎず、実際の原告の代表者としての職務は全て宇野亨が行つていたもので、大木豊も宇野亨が大木豊の名を使つて原告のためにした行為が原告に帰属することを了承していた。

<4> 原告は、本件事業年度以前から毎事業年度に被告に対して自己の所得に関して確定申告を行つている。

<5> 原告は、昭和三五、六年ころ、千葉県八日市場市東小笹汐汲の部落共有地を買収し、また、本件事業年度の翌期である昭和五二事業年度中には、東京都台東区上野四丁目七八番ほか所在の通称京成上野ビルの土地建物を京成電鉄株式会社から買い受けたうえ、これを上野ビスタビルデイング株式会社に売り渡すという不動産取引を行うなどの事業活動を行つている。

<6> 原告の昭和四七年一月一から同年一二月三一日までの事業年度ないし本件事業年度の各事業年度に係る決算報告書の損益計算書に記載の売上高及び売上原価等の諸費用については、これを右諸費用の支出目的に着眼して「営業費関係」、「対外活動費関係」、「人件費関係」及び「維持管理費関係」に区分して分類すると、別表(ロ)に示すとおりとなり、右に計上された各数額から、原告が本件事業年度当時、独立して事業活動を営んでいたことが明らかで、原告は大洋興産とは独立した法人格を有する事業主体である。

(五)  以上認定の(二)の(1)ないし(4)及び(四)の(1)ないし(4)の各事実によれば、本件土地を取得しかつ譲渡した主体が原告であるとの前記(三)の冒頭判示の推認を覆すに足りないというべきである。

(1) なるほど、宇野亨は大洋興産の代表取締役であるから、同人の行為の効果が大洋興産に帰属することになりうるのは当然である。また、同人の前認定の行為のうち、例えば原取得地の売買予約の際の手付金とされた大洋興産名義の約束手形の振出が大洋興産の行為であることも、言うまでもない(だからといつて、原取得地の買主が大洋興産でなければならないということにはならない。)。この外、宇野亨が大洋興産の利益を考えて行つた行為は多々ありうるであろう。

(2) しかし、宇野亨は、同時に、原告の主宰者であり実質上の代表取締役なのであつて、原告の行為は、形式上は代表取締役大木豊の名で行われるにしても、実質的には宇野亨の行為を通して実現されると認められるのである。しかも、前記(四)(1)<3>、同(2)<2>、<3>、<6>、<7>及び同(4)<2>、<3>等の認定事実からも認められるように、宇野亨は、大洋興産のみならず、原告及び那須ハイランドワインをも自由に利用して金融操作を行い、各社の会計帳簿の操作を行える立場にあつたのである。

(3) 他方、原告は、単に宇野亨に操られるだけの何ら実体のない会社というわけではなく、前記(四)<4>ないし<6>のとおりの実体があり、不動産の売買等の事業活動を現実に行つており、大洋興産とは独立した事業主体と認められるのである。

のみならず、前認定事実のうち、例えば、原取得地の買受代金全額の融資を大洋興産一社だけに対してすることに法律上の制約があつて原告をも借受人としたこと及び大洋興産が手数料を受け取るために買受名義人となるのが適当でなく原告を買受名義人としたことなどは、原取得地の買受人ないし銀行融資の借受人として、原告という独立の事業主体を大洋興産とは別に登場させる実質的な必要性ないし理由が存在していたことが明らかである。

(4) してみれば、前認定の諸事実のうち、宇野亨が原告名義をもつてした諸行為は、原告の実質上の代表取締役である同人が、当該行為についての効果を、大洋興産とは別の法人である原告に帰属させようとの意思に基づいて、その選択した法形式に従つて行つたものであり、その法律効果はすべて原告に帰属したものと言うべきである(但し、原取得地の全体につき原告名義で売買契約を締結したこと及び第一次原告名義地を阿部土地建物名義としたことなどは、真実に反するが、そのことは当事者間に争いのないところである。)。

(5) もつとも、<1>旧国有地の売買代金を原告が支出したと認めるに足りる証拠はなく、<2>第一次原告名義地及び旧国有地が阿部土地建物名義となつていた間における諸経費の支払が大洋興産らによつてなされ、必ずしもそのすべてが原告の会計帳簿に記載されているわけでもなく、記帳されている分についても、そのすべてが実質的に原告の資金で支払われたとは認め難い節があるなど、前記の推認に反するかの事実も窺われるところである。

しかし、<1>については、右買受代金を大洋興産が千葉相互本店の小切手で支払つた旨の証人宇野亨の証言があるが、同銀行の大洋興産名義の帳簿にはこれに対応する記載がなく、右証言は俄に措信できないばかりでなく、宇野亨が、当時、右買受資金をどの会社から支出したことにしたにせよ、同人は右資金の帰属及びその会計処理をどのようにするかを自由にすることができたのであるし、後に旧国有地についても第一次原告名義地と共に原告の所有名義としたうえでこれを原告の名で他に売却したという動かし難い事実からすれば、宇野亨は旧国有地を当初から第一次原告名義地と共に転売する目的で阿部土地建物名義で買い受けたものと推認されるのであり、第一次原告名義地が原告の所有であると認定される以上は、旧国有地もまた実質的には原告の所有として買い受けられたものと認めることができる。

また、<2>についても、前記(四)(2)<7>に認定したとおり、右諸経費の支払につき現実に原告の資金が使用された(実際の仮払金との相殺処理が行われた)と認めうるものもあるうえ、その資金及び会計処理の操作はいずれも宇野亨の自由な意思に基づいて行われており、仮に大洋興産の資金をもつて右諸経費の支払がなされた事実があるとしても、それだけから本件土地の所有者が大洋興産であつたと認定しなければならないものではない。その場合には、原告が大洋興産に対して未払の債務を負つている法律関係が残つているにすぎないと解することも可能であるし、また、当裁判所の認定するように本件譲渡に係る譲渡益が原告に帰属すべきものとすれば、その譲渡益の大洋興産への配分額が原告から大洋興産への仮払金として計上されていること(別表(九)及びその付表(3)、(4))を度外視して仮払金の額の多寡を論ずる意味がないこととなろう。

(6) なおまた、第一次原告名義地及び旧国有地の一部である七一八一・九三平方メートルについて、これを阿部土地建物所有名義から原告の所有名義としたうえ、本件譲渡に先立つ昭和五〇年六月二三日に渡辺パイプに対し一億六〇〇〇万円で売り渡しているが、その譲渡収入及び原価が本件譲渡におけると同様の割合で大洋興産、原告及び那須ハイランドワインに配分され、右三社が右各配分金額を収入金額として計上して法人税確定申告をしたところ、これにつき更正が行われなかつたことは、当事者間に争いがない。

しかし、税務行政はできるだけ統一的に行われることが望ましいにしても、本件譲渡と同様の法律関係に立つ土地の譲渡についての確定申告に対し、前事業年度に更正が行われなかつたからといつて、本件土地の実質的所有者及びその譲渡人が誰であるかの法律関係に変動を来たすことにはならないし、また、そのために本件更正が違法となる理由もない。

(7) 以上の認定、判断に反する証人宇野亨の供述部分は措信できず、他に前記の推定を覆し、本件土地を取得しこれを譲渡したのが大洋興産であることを認めるに足りる証拠はない。z.

(六)  そうすると、本件土地を取得し、かつ譲渡したのは原告であるから、本件事業年度において本件土地の譲渡代金額は一四億三九一九万四二八四円であるのにかかわらず、原告は右譲渡代金として二億八七八三万八八五七円を計上したにとどまることになり、一一億五一三五万五四二七円が土地譲渡収入計上もれとして原告の本件事業年度の収入金額に加算されるべきこととなる。

2  被告の主張3の加算金額たる寄付金の損金不算入額について

(一)  原告、大洋興産及び那須ハイランドワインが、別表(四)のとおり本件譲渡代金額、譲渡原価及び譲渡益を右三社で二対七対一の割合に各配分したうえ、右配分された金額を確定決算に計上し、右決算に基づいて、それぞれ法人税の確定申告をしていることは、当事者間に争いがない。

(二)  法人税法三七条五項の規定する寄付金は、通常の営業経費に属さない資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与として把握され、対価を伴わないことを本質とするところ、原告、大洋興産及び那須ハイランドワインの本件事業年度(那須ハイランドワインについては、昭和五二年三月期)の法人税の確定申告状況が別表(七)の<ア>欄、<エ>欄及び<キ>欄のとおりであり、その内容が被告主張3(二)(1)のア、イ及びウのとおり各社とも申告所得金額零円であること、仮に本件土地の譲渡代金の額一四億三九一九万四二八四円の全額を原告に帰属すべき収益の額として右三社の右事業年度の所得金額を計算すると、原告の本件事業年度の所得金額は同年度の期首繰越欠損金額二億八五六九万二九九四円の全額を当期控除額として損金の額に算入した場合においても、別表(七)<イ>の欄のとおり四億八九五七万七五八二円となるのに対して、大洋興産は別表(七)欄<オ>のとおり四億三二八〇万二九八八円の欠損金、那須ハイランドワインは別表(七)<ク>欄のとおり四二三九万〇二一九円の欠損金となり、右二社の各事業年度における期首の繰越欠損金の額が翌事業年度に繰り越されることになる(大洋興産の昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の控除未済欠損金を除く。)。

そして、原告、大洋興産及び那須ハイランドワインは、いずれもその代表取締役ないし実質的オーナーである宇野亨の任意の意思によつて支配管理されている会社であり、各会社の行つた経済取引につき、これをいずれの会社の取引として会計処理するか、また各会社の所得配分等税務申告の内容をどのようにするかなどは同人の自由意思で、いかようにも操作することが可能であつたことは、既に認定したとおりであるが、本件譲渡代金額が全額原告に帰属すべきことは、前記1に判示したとおりであるから、これを所有者である大洋興産が七割、名義提供者である原告が二割、金融協力者である那須ハイランドワインが一割とする配分基準に従つて配分する(原告の反論4(一))ということには、何らの合理性もない。

したがつて、原告が別表(四)記載のとおりに本件譲渡代金、譲渡原価及び譲渡益を、原告、大洋興産及び那須ハイランドワインに二対七対一の割合で配分してそれぞれ納税申告を行つたのは、原告が本来納税すべき法人税の額を不当に減少させる意図によるものと言わざるを得ず、これからしても、原告が大洋興産及び那須ハイランドワインに配分した別表(四)記載の各譲渡益は、原告が何らの反対給付を受けることなく、右二社に対して右譲渡益に見合う経済的利益を供与したものというべきであるから、大洋興産に配分された譲渡益六億一七八〇万四五七二円及び那須ハイランドワインに配分された譲渡益八八二五万七七九六円の合計七億〇六〇六万二三六八円は、法人税法三七条五項に規定する寄付金に該当する。

(三)  右寄付金の金額の損金算入限度額を法令に基づいて計算すると、被告主張3(四)のとおり六億九六二四万七九九一円が損金不算入額となるから、右金額は原告の本件事業年度の所得金額に加算されるべきことになる。

3  被告の主張4の減算金額たる土地譲渡原価認容について

本件譲渡による収入は前記1に判示したとおり全額原告の譲渡収入となるべきものであるから、別表(四)記載の大洋興産の譲渡原価三億八九六三万一四二七円及び那須ハイランドワインの譲渡原価五五六六万一六三二円の合計金額四億四五二九万三〇五九円は、原告の譲渡原価となるべきものであるので、本件事業年度の所得金額から減算されるべきこととなる。

4  被告の主張5の減算金額たる寄付金認容について

前記2に判示したとおり、大洋興産に配分した譲渡益六億一七八〇万四五七二円及び那須ハイランドワインに配分した譲渡益八八二五万七七九六円の合計金額七億〇六〇六万二三六八円は右二社に対する法人税法三七条五項に定める寄付金の額に該当し損金に当たるので、本件事業年度の所得金額から減算されるべきこととなる。

5  被告の主張6の減算金額たる損金算入繰越欠損金について

原告の昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の繰越欠損金五一〇六万〇一七二円、昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の繰越欠損金九六五五万四〇八五円及び昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の繰越欠損金五九〇五万六一五二円の合計二億〇六六七万〇四〇九円(別表(八)の合計欄)は、本件事業年度の所得金額から減算するのが相当である。

6  そうすると、原告の本件事業年度の所得金額は別表(二)記載のとおり四億八九五七万七五八二円となる。したがつて、本件更正は適法であり、これについて原告主張の違法は存しない。

三  次に、本件賦課決定について判断するに、本件賦課決定の前提である本件更正が適法であることは、右二に判示したとおりであり、これを前提として所定の税率を乗じて算出した金額に基づいてなされた本件賦課決定もまた適法である。

四  以上のとおりで、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 増山宏 裁判官 鈴木信行 裁判長裁判官友納治夫は転補につき署名捺印することができない。裁判官 増山宏)

別表(一)

<省略>

別表(二)

<省略>

別表(三)

<省略>

別表(四)

<省略>

別表(五)

原告が大洋興産に対して仮払した相手科目別内訳及び同仮払金のうち大洋興産からの仮受金と相殺した状況(自昭和47年1月1日 至昭和51年12月31日)

<省略>

別表(五)の付表

原告の大洋興産に対する仮払金勘定の仕訳(1)

昭和47年12月期

<省略>

昭和47年12月期

<省略>

昭和49年12月期

<省略>

<省略>

昭和50年12月期

<省略>

<省略>

昭和51年12月期

<省略>

<省略>

別表(六)

原告の一般管理費及び販売費等を営業費関係、対外活動費関係、維持管理費関係に区分した比較表

<省略>

別表(七)

原告、大洋興産及び那須ハイランドワインで本件土地譲渡益を2対7対1で配分した確定申告状況並びに大洋興産及び那須ハイランドワインの本件土地譲渡益を除いた場合の所得金額の対比表

<省略>

(注1)大洋興産及び那須ハイランドワインに配分された本件土地譲渡益706,062,368円は、寄付金に該当し、その損金不算入額696,247,991円を<8>欄別表四加算額計に含めたものである。

(注2)(注1)の本件土地譲渡益706,062,368円は、寄付金に該当し損金に当たるので、同額を<9>欄別表四減算額計に含めたものである。

(なお、<8>欄及び<9>欄に「別表四」とあるのは、確定申告の別表四「所得金額の計算に関する明細書」を指す。)

別表(八)

原告、大洋興産及び那須ハイランドワインの期首繰越欠損金額(控除未済欠損金額)、当期控除額及び翌期繰越欠損金額の明細表

<省略>

(注)<イ>、<オ>、<ク>の当期控除とは、原告及び大洋興産にあっては昭和51年12月期において、また那須ハイランドワインにおいては昭和52年3月期においてそれぞれ控除するものという意味であり、<ウ>、<カ>、<ケ>の翌期繰越とは、それぞれその翌期に繰り越すものという意味である。

別表(九)

「大洋興産」に対する仮払金の期中増加額内訳対比表

<省略>

(注)単位:円

仮受金連動額は「大洋興産」から仮受金として受入れた資金を仮払金として返戻した分を示す。

原価配分額は土地の譲渡収益の配分に対応する原価の配分額を示す。

付表(1)

「大洋興産」に対する仮払金の期中増加額分析表(47年12月期)

<省略>

付表(2)

「大洋興産」に対する仮払金の期中増加額分析表(49年12月期)

<省略>

付表(3)

「大洋興産」に対する仮払金の期中増加額分析表(50年12月期)

<省略>

付表(4)

「大洋興産」に対する仮払金の期中増加分析表(51年12月期)

<省略>

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